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NPO法人 和泉防災ネットワーク スタッフブログ
以前から「防災と言わない防災」という言葉があります。
私はこの言葉を「いつの間に防災」と言い換えていたこともありますが
それは、「結果防災」という言葉があったからです。

要するに、「防災」と声高々に言うよりも、結果防災につながれば、また、それが日々の生活に役立つとか、楽しいことにつながることであれば、尚更良いと思います。

この「土手の花見」は、そんな結果防災の事例の中では有名な逸話で、私が防災を学び始めたころにお聞きした話です。
【参考文献】
 矢守克也「生活防災のすすめ 防災心理学研究ノート」ナカニシヤ出版

みなさんは、なぜ桜の木が土手に数多く植えられているのかご存知でしょうか?

山の土砂崩れを防止するために植林するのと同じように、川の土手が崩れるのを防止するために木を植えた、その木が「たまたま」春に綺麗な花を咲かせる桜の木だったとも言えるのですが、実は桜の木にしたのには重要な狙いがあったのです。

冬の川の土手は、霜や氷によって傷んでしまいます。そして、春が過ぎ、梅雨の頃には、傷んだ川の土手を増水した川の水が直撃し、土手を決壊させることになります。
それで、人を集めて梅雨の時期に入る前に土手をしっかりと固めようと考え、お役所より、以下のようなおふれを出したところ、全然人が集まりませんでした。

「この町に住むもの全員は、○月○日に土手に集まりなさい。
水害対策の為に全員で土手を踏み固めます。」

なぜ集まらなかったのか...
「自分ひとりくらい、うちの家族くらいは行かなくても大丈夫だろう」と、町中の人が思ってしまったからでした。

そこで、ある知恵のある人が「真正面から災害対策を語るからダメなんだ」と言って
今度は次のようなおふれを出しました。

「○月○日に土手で花見大会を行います。
下手や上手にかかわらず歌って踊れるものには褒美
お酒またはお菓子を振る舞うこととする。
家族から何人出ても良し」

結果...
町中の人が土手に溢れかえるほど集まり、花見大会の見物客も、ゴザやむしろを広げてワイワイガヤガヤ、歌えや踊れの大騒ぎ。一日中、町中の人たちが土手を踏みしめてくれました。


つまり、花見客は、単に花見を楽しんでいるだけなのに、実は、土手の決壊防止に貢献しているということなのです。更に、多くの人々が集まれば、危険な個所や補修を必要とする箇所を発見する機会が増えることも計算に入れられているということです。
もちろん、ご近所付き合いという顔の見える関係づくりにもなります。

この話のもう一つのポイントは、花見という誰しも心浮きたつ楽しいイベントであるということです。災害大国と言われている日本で、24時間365日警戒態勢でいることは非常に難しく、長続きしません。いかにして災害と(自然と)共生していくかということを考えることが大切です。

また、いつやってくるかわからない災害に対応する為には、一過性のものではなく、花見客が毎年毎年、土手を固めているといった「何世代にもわたって反復される」、継続的な備えが必要であるということを教えてくれているということです。

こんなお話を知ってしまうと、土手でお花見をしながら騒いでいる人を見ても、あまり眉を顰めずに「あぁ、あの人は実は知らずに防災をしているんだな」と、ちょっとだけ優しい目で大目に見てあげたくなるかもしれませんね。
 


2015/04/01 (水) 21:04 | 防災お役立ち情報
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